紅葉酷道300km:3つの秘境を越える冒険の旅

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先日、以前秋山郷に誘ってくれたイナさん( @ina_419 )が引かれたコースが非常におもしろそうだったので、一緒に走らせてもらってきました。

秘境・奥只見を越えて会津盆地へそこからさらに山越えして山形入りするというコースで、決行は11月頭。新潟〜南東北の晩秋、終わりかけギリギリの紅葉を見尽くすのが狙いなのは明らか。そこに「酷道」という要素まで入ってくるのがおもしろいところ、なかなか思いつけないコースだと思います。

実際、非常に楽しめるコースでしたので、紹介します。

目次

コース概要

平たく言えば、JR北陸新幹線 浦佐駅からJR山形新幹線 米沢駅まで自転車で行きます。走行距離は300km強・獲得票高はGarminの算出値で4,500mほどあります。1日で走り切るのは現実的ではありませんし、夜通し走るのではせっかくの紅葉も楽しめません。そのため、檜枝岐村と喜多方(ともに福島県)に宿をとっての2泊3日の旅となっていました。

このコース最大の特徴は、「酷道」を2つも走れること。新潟と福島にまたがる広大な山岳地帯を越えていくのですが、その際に国道352号(樹海ライン)国道401号を走ります。この2路線は国が指定する道路である国道でありながら、秘境区間を含むというおもしろい存在です。時期は晩秋、どのような表情を見せてくれるのか、わくわくしないわけがありません。

また、3県を駆け抜けるというのも特徴です。ただ幹線道路を300km走るのであれば飽きてもきましょうが、山あり谷あり盆地あり酷道ありの300km。そういった心配もありません。

難易度は「それなり」

一部を除いてそこまで難しいコースではない、というのも本コースのいいところです。

本コースは大まかに5つの区間に分けられ、①魚沼盆地区間&②奥只見区間を1日目に、③奥会津区間&④会津盆地区間の前半を2日目に、3日目は④会津盆地区間の後半&⑤米沢区間を走ります。

②奥只見区間は難易度高めといっていいと思います。標高100m強の魚沼盆地から最大で標高1,500m強まで上る必要があるうえに、補給もリタイアも難しくなっているので(鉄道もバスもありませんし、携帯の電波も怪しい)。

ただ、そこさえクリアすればあとは下り基調、大きな上りもありません。宿で体力を回復できることを踏まえると、初日さえ走り切れればあとはどうにかなるタイプではないかと思います。

以下、区間ごとにどんなコース&景色なのかを紹介していきます。

朝霧漂う魚沼盆地を出発

先述の通り、起点となるのはJR北陸新幹線 浦佐駅。上野駅から始発に飛び乗って1時間20分ほどで到着します(11月頭だと日没は16時30分頃、山奥で夜になると不安感半端ないので、始発か前泊推奨です)。

今回は3名(自分+イナさん+PieTako[ @PieTako ]さん)でのライドでした。実はこの面々、昨年の同時期にこれから走る奥只見で地獄を見た経験アリ。今回は、リベンジ的な意味合いで企画された、という側面もあったりなかったり。

朝霧の中、魚沼盆地を走ります。以前走った魚沼スカイラインに行けば雲海が見れたのかもしれませんが、今回はもちろんスルー。

目指すは越後山脈方面。道中に建ち並ぶ味のある民家の先に、越後山脈の裾野が見えてきます。

雰囲気の良い魚沼盆地区間ですが、わずか10kmで終了です。同区間の終点となるのがこちらのコンビニなのですが、本コースでもっとも重要な施設かもしれません。

というのも、ここから1日目のゴールとなる檜枝岐村までの90kmは本格的な山岳地帯なうえに、補給できる場所が1カ所しかありません。紅葉の末期を狙って11月頭に突入するわけですが、道が冬期封鎖になる直前であって、沿道の山小屋などは軒並み閉鎖済み。

檜枝岐村まで走りきれるだけの食料&水分はここで買っておくべきです。

国道352号が“酷道”たる所以、「樹海ライン」の紅葉を味わう

コンビニで補給食等を万全な状態にしたあとは国道352号に合流します。クルマを避けて並行する側道に迂回しつつ進むと、緋色に色づいた山が目に飛び込んできました。

越後山脈に分け入る「枝折峠」

徐々に紅葉との距離が近くなってきます。


立派な幹線道だった国道352号は、うねうねとくねる狭溢な山道に姿を変えます。魚沼地方を代表する峠である「枝折峠(しおりとうげ)」の始まりです。


越後山脈に分け入っていく道であり、上りながら振り返れば紅葉で一面色づいた同山脈の山々が望めます。これが11月頭に訪れるべき理由です。

自転車で緋色の中に突っ込んでいくような感じ。

眼前に一面の紅葉、思わず脚が止まります。


おにぎり(道路標識)があるから国道だとわかる、そんな道です。多くのクルマが行き交う、そんな定型的な国道のイメージからはかけ離れているのに、区分としては同一。そこに酷道を行くおもしろさがあります。

上れば上るほど秘境感は増していきます。

ピーク手前の景色がすさまじい。

わずかな人間の領域を自然が侵略するのを防ぐ、いかつい洞門。抜ければ稜線です。


稜線からの展望は壮観の一言。山麓に一線、それは自らの脚で踏破してきた道。山間に温泉街がちらりと顔を覗かせていて、その先には先ほどまでいた魚沼丘陵がうっすらと。


そして、枝折峠のピークに到達。無論これで終わりではなく、景色はさらに非日常的なものに変わっていきます。

幻想秘境・奥只見


枝折峠の先に広がる一帯は奥只見と呼ばれますが、晩秋の一時期には紅ではなく緋に染まります。国道352号が冬期封鎖になる直前の11月頭がまさにそのタイミング。魚沼盆地側と比べると、格段に混じる緑や黄が少ないのが特徴的です。


枝折峠を下り切ってしばらくするとまた上りが始まり、その途中で奥只見湖が。

国道352号は細かくカーブを繰り返しながら、歪な“元”の字をした奥只見湖に張りつくように続いています。

その最奥部では「東ノ城(ヒガシノジョウ)」が人知れず偉容を湛えていました。山頂部の窪みに縦に入ったラインが非常に印象的です。

カメラを構え直すわずかな時間で光の当たり方が変わり、また別の表情を見せます。山肌を染める褪せた血のような赤と、骨のように白い木々の幹、地獄にでもたどり着いたのかと思うような組み合わせです。

美しくもどこか荒廃した雰囲気の奥只見最奥部を走っていると、ダークファンタジーの世界を旅しているかのような心持ちになってきます。

もう1つ、この区間を象徴するのが「向こう側の道」です。

奥只見湖を挟んだ対岸に、道が通っているのです。紅葉を切り裂く一線は強く印象に残ります。

ずっと視界に入っているのですが、距離が近くなってからがだいぶ長い。

樹海ラインは細かくカーブを繰り返していて、たどり着けそうでなかなかたどり着けないのです。

やっとのことで「向こう側」に到達。乗り越えてきた道がいかに壮絶な景色の一部であったか、ここでようやく理解できます。“酷道352号”の醍醐味でしょう。

福島県に入ってからがしんどい理由

奥只見湖畔を離れ、県境を超えます。ここからは福島県は檜枝岐村。

ライド的にはここからが大変だったりします。国道352号は会津駒ヶ岳と燧ヶ岳(ひうちがたけ)の間を通っていて、標高900m弱から一気に1,500mほどまで上らなければなりません。


70km走ってからの大上り、展望も開けないため精神的にはかなりキツいです。写真を撮るのにかなり時間を使っていたせいで日没に差し掛かっており、それもしんどさに拍車をかけました。


結局、ピークにある御池ロッジにたどり着いたときには日が暮れていて、暗闇の中を宿まで下ることに。

最強すぎる宿「旅館ひのえまた」(余談)

余談気味ですが、このときに泊まった宿があまりに素晴らしかったので紹介しておきます。奥只見〜檜枝岐のあたりは駅からとにかく遠く、輪行で日帰りライドを企画すると雨の中130km走ったりする羽目になってかなり悲惨です。泊まったほうが楽しめると思うのですが、「旅館ひのえまた」はその際の宿泊先として本当におすすめできます。

食事は山人鍋・地こごみ・はっとう・裁ちそば・めぇだけ(舞茸)飯といった郷土料理一色、「ここでしか食べられないもの」しかないんですね。食べながらこれはなんだろう、これはおいしいと話に花が咲きました。サンショウ魚の唐揚げなんてものまでありました。

この手の料理は地酒とひたすら合います。飲み比べセットも用意されています。ライド後の日本酒は通常の30倍気持ちよくなれますが、ここだと50倍くらいかもしれません。酒飲みにはたまりません。

自転車も玄関口に入れさせてもらえ、洗濯機なども貸していただけました。

温泉は無色無臭のアルカリ性、疲労回復などの効能があるそうです。朝夜で男湯と女湯が入れ替わるので、1泊でも2種類の露天風呂を楽しめます。

建物は非常に綺麗で、部屋の窓からの景色も最高。

個人的に嬉しかったのが、朝食後に豆から淹れた珈琲が飲めたこと。意外と飲めない宿が多いのですが、カフェインを入れると脂肪燃焼が捗ったり朝から集中して走行できるので、あると非常に嬉しいんですよね。

ここ数年で泊まった宿の中ではまちがいなく最高。サービスが完璧すぎです。

燃えさかる奥会津

檜枝岐村を出て走るのは奥会津。奥会津は会津盆地から見て南西にある広大な山間部一帯のこと。


豪雪地帯であり、長大なスノーシェッドをいくつも抜けることになります。


この区間も紅葉末期、赤身の強いオレンジ色に染まっていました。


下り基調で速度がよく乗るため、奥只見区間とは異なり、ものすごい勢いで景色が変わっていきます。

国道401号 新鳥居峠──もうひとつの酷道区間

奥会津には本コースもうひとつの目玉があります。国道401号の新鳥居峠区間がそれです。

檜枝岐を出た先から始まる401号は奇妙な国道です。南郷町の交差点で突如として別の国道に変わる…と思いきや、右折して山の中に入っていきます。

ここでも終わりが近い紅葉を間近に進みます。

沿道には木しかありませんが、舗装はとても綺麗です。

雑草に紛れたおにぎりに気づかなければ、国道だとは思わないんじゃないでしょうか。ここ、国道401号の新鳥居峠区間は本コース2路線目の“酷道”。

どんどん分け入っていきます。

いくらか上ったところで振り返ると、なかなかの秘境っぷり。通るクルマもほとんどなし。


“酷い道”というのはクルマやバイク目線の話であって、自転車の目線だと「舗装がいいのに交通量がほとんどなくて景色を楽しみながらゆるく上れる最高の道」でしかありません。


ピークには立派な看板がありますが、よく見ると貼られている文言を修正するシールが微妙に剥がれています。

下りに入りますが、まだまだ景色は秘教系。


オレンジ・イエロー・グリーンのトリコロール。


色づきのトンネルを抜けて進みます。


奥只見のような派手さではありませんが、静かに楽しめる良い“酷道”でした。

只見線沿いにひたすら下って会津盆地へ

その後は金山町まで下り、そこからさらにJR只見線に沿いに会津盆地を目指します。


只見線は2011年の新潟・福島豪雨影響で一部区間が不通になっていました。当該区間の運転がちょうど2022年10月に再開されたばかりで、金山町内には「来て」という極めて率直なメッセージを伝えるポスターが貼られていました。


只見川に敷設されたダムには「東北電力」の文字。普段はこんなものわざわざ撮りませんし、誰も気にしないでしょうが、自分は父方の実家が会津にあって育ちも東北なので、なんというか「帰ってきた」という感じがしてついシャッターを切っていました。


新潟方面へと向かう只見線の姿を目撃できたりも。なんとなく只見線沿いも走破してみたくなりますね。


黙々と下って暗くなる直前に会津盆地に到達しました。

会津盆地の雲と山

宿を会津盆地の北東、裏磐梯方面にとっていたため、日が落ちてからも走りました。

ホテル観山」に到着、2日目の行程を終えます。ぬるっとした泉質の温泉が良かったですね。

わざわざナイトライドをして「盆地の反対側まで行った意味」がこちら。宿の近くにあった展望台からの景色です。雲の先に自分たちが越えてきた山々のシルエットが。こういった光景は、自力で走破してきたからこそ心に残るような気がします。

(とはいえ、宿は会津若松か喜多方の市街地にとるのが無難です)

喜多方の朝。市街地が雲海の中に沈んでいました。


沿道にはレトロな雰囲気の建物がちょこちょこ、それらを横目に最終目的地を目指します。

会津盆地北端へ

通り雨に降られながら進むと、標識に「米沢」の文字。

山岳をもう1つ越えるべく、国道121号を目指します。

国道121号は交通量が相応にあるので、県道333号(日中喜多方線)に迂回し、日中ダムに立ち寄りつつ、上って行きます。

ダム湖畔の色づきは相当なもの。


謎の橋がいい感じ。

米沢に至る道「国道121号 大峠道路」

目的の国道121号に側道から合流。国道121号は会津盆地北端の喜多方と山形の最南端にあたる米沢盆地を結ぶ要路です。

この区間は高規格道、「走れなくなると困るんで山を無理矢理ぶち抜いていつでもいけるようにした道」です。13のトンネルが開削され、20の橋が渡されています。

トンネルを抜けるたびに変わる景色がこの道の目玉です。紅葉は最盛期で、日中ダム湖畔の林道が美しく彩られていました(ちなみに、この林道は残念ながら通行禁止でした)。

地形を無視した道なので、見える景色もまず見られないものになっています。真下に通る林道と立体交差していて、写真を撮ったらドローンで撮ったような感じに。

この区間には「大峠道路」という名前がついています。なんですが、ここは「大峠」ではなかったり。本当の大峠はまた別のところにあり、今は廃道になっています。毎年積雪で通行止めになってたそうですが、重要路線なのでそれじゃ困る…ということでこの大峠道路が整備されたらしいです。

正直走りたいのは廃道のほうなのですが、こちらはこちらですばらしい道です。

最後のトンネルが「大峠トンネル」。

それを抜けると…


そこは米沢、福島-山形の県境です。

あとは駅まで下るだけ、対戦ありがとうございました。

米沢盆地へ

山形に入ると雰囲気と空気ががらりと変わったように思いました。会津盆地の空気はなんとなく重い感じでしたが、山形側は少しからりとした代わりに一段冷たかった。

下っていく途中で、裏磐梯からアクセスできる白布峠のあたりが見えました。この日は凍結で通行止めになっていたため諦めたのですが、本来であればあちらを走っていました。ピーク付近の景色がすごそうなので、こちらもいずれトライしたいところ。

米沢でしか摂取できない栄養素

無事にJR山形新幹線 米沢駅に到着。いい旅でした。

でも「じゃあ輪行して帰るか」では味気ない。

幸い、米沢駅前には多くの飲食店があります。区間的に短いために薄かった“山形成分”は「ステーキ東洋館」で米沢牛を食すことで摂取することにします(200gで7,000円くらいしますが、2,000円とかのステーキとは味がぜんぜんちがいます。甘みを感じる上品な味でした)。

まだ物足りないのでハシゴ、地酒をいくことにします。名前がいい、その名の通りのキレの鋭い味わいなのもまたいい。

山形でしか摂取できない栄養を堪能し尽くすと意識が朦朧としていました。慌てて新幹線に飛び乗り、帰京しました。


3県のおもしろいところだけをうまくつないでくれたイナさんには感謝しかありません(こういったライドを構想するのは正直かなり難しいです)。一緒に走ってくださったPieTakoさんも何気に狂ったライドをよくやっているので、それぞれフォローしておくと何かと楽しめるかと思います。

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たまに東京を脱出しないとSAN値が保ちません。

コメント

コメント一覧 (1件)

  • […] なお、上記のようなプランを立てたのは自分ではなく、秋山郷や紅葉酷道300kmライドに誘ってくれたイナさん( @ine_419 )です。いつも楽しいライドに連れ出してくれてありがとうございます。イナさんはTwitterを中心に活動されている自転車芸人さんです。絶景写真と身体を張ったギャグを定期的に投下しているので、フォローしておくと楽しめるのではないかと。 […]

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