卒塔婆並ぶ護摩壇が待つ。標高1200mに至る24kmの林道「奥千丈線」(奈良県十津川村)

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紀伊半島にある護摩壇山(ごまだんざん)。以前酷道425号を完走した際に、よく標識にその名が登場して気になっていた山です。高いところというだけで愚者と自転車乗りを呼び寄せるもの。護摩壇山は和歌山県の(ほぼ)最高峰、あるわけです、誘引力が。

かつては修験道の道場で、山名は屋島の戦いに敗れた平維盛が平家の命運を占うべく護摩を焚いたという伝説に由来するといいます。浪漫に弱い自転車乗りが気にならないわけがない山なわけですが、都合良く、そこに至れる林道が存在していました。

今回はこの長大な林道「奥千丈線」を紹介してみます。

目次

コース概要

奥千丈線は、奈良県十津川村にある林道です。紀伊半島のど真ん中に位置する十津川の中西部と、隣接する和歌山県田辺市の龍神村をつないでいます。

アクセスはとにかく大変。国道168号を延々南下し、奈良県道723号(川津髙野線)を延々と西進した果てにようやくたどり着く、という感じ。輪行よりトランポが楽でしょう(実走に当たっては輪行と自走を併用し泊まりがけでアタックしています。長くなるので、詳細は下記余談に記します)。

実走データによると、奥千丈線の総距離は約23km・獲得票高は約1,200m。平均勾配は5%強ですが、一度大きく下ります。山岳を意識した構成のバイク・装備でないと登坂区間はかなりキツいかと思います。

難易度はかなり高めでしょう。アクセスもリタイアも難しいです。それでも紹介するのは、奥千丈線の景色にはそれだけの価値があると思うからです。

実走時のアクセス経路について(余談)

実のところ奥千丈線だけを目的に走ったわけではなく、紀伊半島横断が最終目的でその一環として走りました。まず松阪駅(三重県松阪市)まで輪行で向かい、そこから紀伊山地を越え、JR紀勢本線 藤並駅(和歌山県有田郡)でゴール、帰京しています。

途中、上北山村と十津川村(ともに奈良県)で1泊ずつする、2泊3日の行程。 1日目はこんなコースを走りました。このコースはわりと虚無でした。

2日目は天川村経由で十津川村を目指す、という感じ。酷道309号の目玉スポットであるナメゴ谷/行者還トンネルを通過するため、非常におもしろいコースです。

また、紀伊山地を縦断する国道168号を経由するのですが、その際に見れる景色もなかなかのものです。

奥千丈線は3日目に走りましたが、全体ではこんな感じのコースでした。

おもしろいのが、奥千丈線に入る前に「河の中の道」を走れること(かなり珍しいと思います)。

「よくつなげるねぇ」という感じのコースなのですが、引いたのは自分ではなく、秋山郷奥只見に誘ってくださったイナさん( @ina_419 )。この手の尋常ではない道をみつけて一筆で走れるコースにするセンスはちょっと真似できないですね。Twitterによくライド写真を投稿されているので、ぜひフォローしてみてください。

辺境・十津川の西端が起点

川津髙野線に入る時点でかなりの山奥なのですが、奥千丈線の入口はそこから40kmほど進んだあたり。

林道標識の少し先には白いゲート、佇まいが非常に美しい。

ところどころ落下物が散らばっていましたが、全体としては紀伊山地の深奥にあるとは思えない維持・整備っぷり。舗装のガレなどはほぼありませんでした。

少し南を走る酷道425号同様に、嫌になるほどくねくねとした道な上、勾配はけっこうなもの。

序盤はぐいぐい上るところがわりと多かった気がします。

繰り返される「向こう側の法面とガードレール」

ある程度上ると、一気に視界が開けます。

強烈なのが山肌に沿って通された道がはっきりと見通せること。

しかもそれが何度も何度も繰り返されます。

奥只見の「向こう側の道」とはだいぶ毛色がちがいます。あちらは延々と対岸にたどり着かない、という感じですが、奥千丈線は「着いたと思ったらまたその先に法面とガードレールが見える」の連続。

繰り返されれば見慣れて飽きてくるものですが、そんなことがないのが奥千丈線。

崖道が手前にひとつ、その奥にもひとつ。自らの力で越えてきた道の規模感がわかるのは、ヒルクライムでもっとも昂ぶる瞬間ではないでしょうか。

無限に撮ってしまう。

長大なれども冗長ではなし

崖道区間が終わると、今度は大下りに。紀伊山脈に大きく切り込む巨大なヘアピンカーブになっています。途中に謎の廃墟があるのが個人的には最高、目に飛び込んできて背後に消えていく“滅び”は僻地自転車旅のいいスパイス。

近づく最終区間

大下りの先でまた表情を変える奥千丈線。

稜線との距離が近くなり、ゴールとなる護摩壇山がはっきりと見えるように。

沿道のススキの背がとても高かった。

山岳道路的な風景はその先で完全に終わります。気づけば標高は1,200mを越えていました

「護摩壇」を駆ける

奇妙な光景が目に飛び込んでくるやいなや消えていきました。白木の卒塔婆が山肌にいくつも立っているかのよう。煙のような雲に一帯が包まれている。

もちろんそれはいかめしい由来をもつ護摩壇山にいるのだという実感と、悪天候による荒涼とした雰囲気の組み合わせから脳が導き出したある種のまぼろし。実際は禿げた山肌を人工林として再生させるべく行われた植樹の跡

ただこのときはその和風ゴシックな妄想に取り憑かれ、圧倒され、脚を止めることなく駆け抜けてしまいました。

嫌でも記憶に焼き付くような景色の連続だった奥千丈線、その終点が見えました。長いようで短かったように思います。

終点は奈良県と和歌山県の県境上にあり、髙野龍神スカイラインに接続します。

少し先に道の駅があるのですが、12月の頭だったので売店は既に営業していませんでしたし、展望塔「ごまさんスカイタワー」は雲の中。

とはいえ、荒天は林道や山岳道路においては必ずしもマイナスではない気がします。非日常的・幻想的な光景が脳裏に刻まれるのですから。そのあと寒さに凍え、飢えに苦しんだとかは些細なことです。

帰りに通った「林道白馬線」もいい感じ(余談)

先の余談で述べたように、実際には護摩壇山から和歌山沿岸部まで下って輪行で帰京しているわけですが、その際に通った林道白馬線(和歌山県田辺市龍神村)もなかなか良かったので合わせて紹介しておきます。

標高1,200m付近を通る髙野龍神スカイラインに接続する林道なだけあって、近くの山の斜面との距離が非常に近い。今回は霧の中を下る形でしたが、紅葉の時期などに合わせて上るのもかなり良さそうです。

最後になりましたが、今回は103さん( @tomy_viajarブログ )とすーさん( @su_san5392 )ともご一緒させていただきました。お二人は関西方面の未舗装路をよく走られているその筋の方々。走る道が物珍しいだけでなく、バイクもウェアもファッショナブルで、ときおりTwitterに投下される写真は見ていて楽しいばかりです。イナさんと併せてフォローしておくと楽しいかもしれません。

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たまに東京を脱出しないとSAN値が保ちません。

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